あの日のワンショット「(36)オランダ ザーンセ・スカンス」
大学2年の夏、50日間のヨーロッパ一人旅の後半。オランダのアムステルダムにたどり着いた。既に約1ヶ月以上旅をしてきたので、少々の疲れを感じてきていたことと、好奇心のアンテナがやや鈍くなってきていた。そしてなにより旅自体が惰性に近くなってきて、感動が薄らぎ始めていた。もうそろそろ帰りどきかなと、体も心も感じ始めていた。
そんな中でオランダの代表的な風物である風車を見ずしてオランダへ行ったとは言えまいと思い、アムステルダム近郊のザーンセ・スカンスへ風車見学に行った。
何基もの風車のある風景はオランダのイメージそのものだった。私がザーンセ・スカンスを訪れた時はあまり観光客も見かけず、のどかな田舎の風景が広がっていた。そして一人、「思えば遠くへ来たもんだ」と感慨にふけりながら、のんびりと運河沿いを散策した。
アムステルダムでは、これといった思い出がないまま2泊して旅程を進め、デン・ハーグという街にむかった。デン・ハーグには世界的に有名なミニチュア都市「マドローダム」というアミューズメントパークがある。お昼と夜の2度にわたって「マドローダム」を訪れたが、自分がガリバーになったような気分で緻密に作られたミニチュア都市を見てまわった。そして思い出深きはマドローダムで食べた「生ニシンをはさんだコッペパンのサンド」。生ニシンとタマネギのみじん切りが軟らかいコッペパンにはさんであるだけのシンプルなものだが、なんともこの味が私には忘れがたい。生ニシンを食べる風習は夏のこの地方の風物詩となっているらしい。もう一度食べてみたいと思いつつも、いまだに願いはかなわず。