あの日のワンショット「(31) USAニューヨーク」
医師となって丁度1年たった頃、教授から5年に一度開催される世界皮膚科学会で演題発表するよう命令が下った。まだ医師として駆け出しの自分に英語で発表などできるのだろうかと心配だったが、1年先輩の森田先生(現名古屋市立大学皮膚科教授)と同期の笠松君(現かさまつ皮膚科院長)の仲良し3人組でニューヨークに行けるとのことで、なんとかなるだろうと発表の準備にとりかかった。
あれこれ苦労もあったが、学会の帰りに休暇を数日とらせていただきフロリダのオーランド(ディズニーワールドやユニバーサルスタジオなど多くの施設が一同にそろっているリゾート都市)へ立ち寄ることを許されたので、忙しい日々の中、頭の中には“リゾート、リゾート”と“リゾート”の文字が駆け巡り、なんとか出発にこぎつけた。
世界各国から皮膚科医が集まり、5年に一度の皮膚科最大の学会であった。無難に発表を終えることができたのが何よりだった。すべて英語なので、他人の発表や展示など、わかったようなわからないような、細かいところは???で終わってしまった。今どき何をするにも英語は必要です。とは言っても開業したら英語とは無縁の生活になってしまったが・・・。
学会場で現地のテレビ局のレポーターに呼び止められたのだが、森田先生も笠松先生もそ知らぬ顔していたので、私にインタヴューがまわってきてしまった。私がメチャクチャな英語で答えていたので、レポーターは少々とまどっていたが、私のほうがもっととまどっていた。私のインタヴューは完璧にカットされたはずだと思っているが、どうなったことやら。私にインタヴューをまかせておいて、とまどう私の姿を見た森田先生と笠松先生はゲラゲラ笑っているのだから、なんとしたことか。この3人でいると要領の悪い私は、いつもそんな役を引き受けてしまう。
数日間ニューヨークに滞在したが学会場で大半を過ごしたので、自由の女神も見ないままニューヨークを去ることになった。それでも名古屋市立大学同門の先輩で米国在住の高島明先生に有名なステーキハウスと夜景の素晴らしいバーに連れて行っていただいたことと、ブロードウェイで本場のミュージカル「ミスサイゴン」を観たことがニューヨークでの思い出として今でも懐かしく思い返される。