あの日のワンショット「(20)フランス パリ近郊 バルビゾン」
大学2年の夏、50日間のヨーロッパ一人旅もここフランスで最後となった。夏も終わりを告げようとする8月下旬、パリで知り合った日本人学生とパリの南約40キロにあるフォンテンブローの森とバルビゾン村をサイクリングで巡るワンデイトリップに出かけた。
フォンテンブロー・アヴォン駅というところまでローカル線で行き、駅でレンタサイクルを借りて、フォンテンブローの森を通り「落穂拾い」で有名なバルビゾン派のジャン=フランソワ・ミレーが制作活動していたバルビゾン村に向けて自転車を進めた。ミレーのお墓を最終目的地と決めて、フランスの田舎をのんびりと自転車をこいでゆくのだが、バルビゾン村までは結構遠い道のりだった。
異郷の地のそれも写真にあるような畑の中の田舎道をゆくのは、道に迷いそうでチョッと不安だった。途中で道を尋ねようにも、フランス語はわからないし、どうしようかと思いつつ6ヶ国語事典で調べるとフランス語で「お墓」のことを「トンブー」言うらしく、出会う人に「ミレートンブー?(ミレーのお墓はどっち?)」と聞くと指差して方向を教えてくれるので、とにかく「ミレートンブー?」を繰り返しあちこちで聞いてその方向へ進んだら、最終目的地のミレーのお墓に到着した。
途中、「落穂拾い」の原風景でもあるバルビゾンの農村の風景をゆっくりとした自転車の速度で目に焼き付け、そしてバルビゾン村の匂いや風の感触までもが五感を通して伝わってきた。
とてもノスタルジックかつセンチメンタルな気持ちになった日だった。ミレーと聞くと、そしてミレーの絵を本などで見ると、あの日のことを懐かしく思い出す。