あの日のワンショット「(15)ソビエト連邦 モスクワ」
大学5年の夏、ハバロフスク発のシベリア鉄道に1週間乗って終着駅のモスクワに着いた。まだ社会主義のソビエト連邦であったので、個人旅行だったがソ連旅行専門のツーリストビューローを通して列車からホテルまですべて日本からの予約が必要だった。
行き当たりばったりの自由な旅に慣れていたので、少々息苦しい旅であったが、モスクワ市内では特別警察に監視されることもなく、とりあえず自由に歩きまわることができた。
国営デパート、国営食料市場などを見てまわったが品物の少なさや粗雑さなど、社会主義国の経済状況を肌で感じた。バッグパッカーの私にとってはとても高価なホテルに泊まらされたが、規模が大きいだけで施設はさほど立派でもなく、食事も何を食べたか思い出せないほどなので、たいしたものにありつけなかったのだろう。
レーニン廟、クレムリン、聖ワシリー聖堂、グム百貨店に囲まれて有名な「赤の広場」がある。クレムリンはモスクワで一番の観光名所で私もロシアの多くの文化遺産を見てきたが、それより思い出深いのは立派な地下鉄だった。戦時に備えてシェルターの役割を果たすように、かなり地下深くまで掘られた地下鉄だった。エスカレーターの長かったこと・・・
ジャムの入った甘いロシアンティーを飲むたびに、わずか3日間の滞在だったが、懐かしくモスクワのことを思い出す。