あの日のワンショット「(13)クウェート」
平成7年秋、外務省の派遣による巡回診療でバーレーン、カタール、オマーン、サウジアラビア、クウェートの5カ国を訪れた。その最後にクウェートを訪問した。
クウェートは人口約300万人のペルシャ湾に面した小国で、石油埋蔵量が世界第4位を誇る石油立国で一人あたりのGDPは世界有数と言われている。豊富なオイルマネーによって産業基盤の整備や福祉・教育制度は充実しており、ほとんどの国民は国家公務員か国営企業の社員として働いている。また外国からの投融資環境が整備され莫大な雇用が創出され、不足している労働力は周辺外国人が補っているという、裕福な国である。その裕福さは街中を車で走っていても、ベンツをはじめとした高級車を多く見かけたし、多くの家庭でフィリピン人やインド人などがメイドとして雇われていることからも知らされた。
1991年の湾岸戦争の際は裕福なクウェート国民は国外脱出し、アメリカとイラクが自国クウェートを舞台に戦争している有様を国外からテレビ観ていたという話も聞いた。写真に写っているのは数少ないクウェートの観光スポット「クウェートタワー」。左から2番目の方はクウェート大使館の高橋医務官。医務官の本来の任務は大使館員の健康管理なのであるが、ここクウェートでは有事の際の邦人国外脱出についてなども医務官が担当しているそうで、その話から“ただならぬ国 クウェート”と思い知った次第である。行きたい人もそうそういないだろうが、行きたくても行けない国である。