あの日のワンショット「(11)マレーシア マラッカ」
大学を卒業して医師国家試験も終了し、合格発表までの間の休みを利用してインドネシア、シンガポール、マレーシアを旅した。この旅の最後にシンガポールから乗り合いバスでマレーシアのマラッカへ向かった。
マラッカは、イスラム、明、ポルトガル、オランダ、日本軍、イギリスなど多くの国々に翻弄された歴史があり、街のあちらこちらにその面影が残っていた。日本にキリスト教を布教したフランシスコ・ザビエルもこのマラッカから東アジアの布教に出かけている。
写真の赤い建物はマラッカの中心地にある有名なマラッカ・キリスト教会である。また右の写真は小高い丘から望んだマラッカ海峡である。この海峡は最近では海賊が出没することでもしばしば話題になるのでご存知の方も多いのではないだろうか。
一人で街をあてもなく彷徨い歩いていると、中国系セレブの家屋が並ぶ地域あり、西洋の香りのする地域あり、イスラム教の世界ありで歴史を感じる街であった。そんなこの街は2008年にその歴史的な街並みがユネスコの世界遺産に登録されている。
例のごとく、私は動物的な感を働かせてこの街でも屋台めぐりをしたのだが、名前は定かではないが中国系とイスラム系の料理で結構イケルものに出会った記憶が残っている。またやや郊外にあるポルトガル系住民居住地区へローカルバスで出かけて、ポルトガル料理のレストランで魚料理を食べたことだけは、今でも忘れないでいる。旅の中での“食”は私にとって思い出の中で大きなウエイトを占めているようだ。
また、ある店でコーラン(イスラム教の聖典)をおみやげに買おうとしたら、「おまえはイスラム教徒か?」と問われ、「そうです」と嘘も言えなかったので、売ってもらえなかったが、イスラム教徒からみたら私の行為はイスラム教を冒涜するものだったろうと、その後、素直に反省したほろ苦い思い出も蘇ってくる。
平成22年7月29日 院長