蕁麻疹(じんましん)
蕁麻疹とは
蕁麻疹は蚊に刺されたような、かゆくて赤い膨らみ(膨疹)が出て、その数や大きさが広がってゆく皮膚病です。多くの場合、個々のぶつぶつや膨らみは数十分から数時間以内に消えては、また違った場所に出てくることを繰り返します。
蕁麻疹の原因を明らかにできる場合は少なく、70%以上の患者さんは明らかな原因を見つけることができません。しかし蕁麻疹の悪化・背景因子としてアレルゲン(食物、寄生虫添加物、防腐剤、人工色素、薬剤{特に風邪薬、解熱鎮痛剤、降圧剤など}、環境中物質)、物理的刺激(擦過、温熱、寒冷、日光)、発汗、運動、感染症(急性扁桃腺炎、感染性下痢、慢性扁桃腺炎、副鼻腔炎、歯槽膿漏、虫歯)、疲労、ストレス、日内変動(夕方から夜にかけて増悪)、自己抗体、基礎疾患などが挙げられ、複数の因子が複合的に関連することがあります。また一部の患者さんに甲状腺疾患、ウイルス性肝炎、胃炎などが背景にあったり、膠原病、血液疾患、血清病、血管炎などの病気の一部として蕁麻疹が現れていることもありますが、大部分の蕁麻疹は内臓の病気と関係ありません。
蕁麻疹には6週間以内に治る急性蕁麻疹と6週間以上出没を繰り返す慢性蕁麻疹があります。急性蕁麻疹は1週間以内に70%の方が治り、1ヶ月で90%の方が治ります。蕁麻疹にはアレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。アレルギー性蕁麻疹の一部は血液検査で原因を調べることが可能です。非アレルギー性のものについては病歴や皮膚以外の症状から疑われる疾患に対して一般内科的な検査を進めます。しかし発症して6週間以上経過した慢性蕁麻疹で、特に皮膚以外に症状がない場合では、詳しい検査を行ってもほとんど異常が見つかることはありません。
当院のおける治療
蕁麻疹の治療において、大切なことは原因ないし悪化因子を取り除くことです。どのような時に蕁麻疹が出てくるのかを振り返って、原因がはっきりすれば、その除去あるいは回避に努めることが重要です。
ただし、日光、寒冷、発汗など、回避することが困難な誘因については、逆に症状が現れない程度の刺激(負荷)を続けて加えることで、症状を緩和させることが可能な場合もあります。
しかし、原因や誘因を見つけ出すことができなければ、(特に慢性蕁麻疹では原因を明らかに出来ない場合も多く)、主にお薬によって蕁麻疹を抑える治療を行います。
飲み薬治療
飲み薬は症状、薬の種類によって1日1回か2回内服します。蕁麻疹が出なくなったからといって急に飲み薬をやめると2、3日してまた出てくることが多いため、症状の消失後も急性蕁麻疹であれば1~2週間、慢性蕁麻疹であれば1~2か月程度はお薬を飲み続け、その後は、少しずつお薬の種類と量を減らしてゆきます。
なお、お薬の減量を急ぎすぎると症状が再発することがありますので注意が必要です。長期にわたる治療の際はお薬の減量について個別に指導いたします。
慢性蕁麻疹の場合、一般的にはお薬を内服しなかった場合に1週間に3日以上蕁麻疹が発症する時は毎日お薬をお飲みいただき、1週間に2日以内の発症であれば蕁麻疹が出た時にお薬を飲めばよいでしょう。
しばしば「薬を飲んでいる間は調子いいが、止めるとまた発疹がでてくる」と言われて転々とドクターショッピングをされる方がいらっしゃいますが、現在の医療レベルにおいては、飲み薬で症状を抑えつつ、治癒する時期を気長に待ち続ける治療が本道です。
なお蕁麻疹の飲み薬は眠気や倦怠感を生じやすいので、運転や仕事に支障のある方はお申し出下さい。
塗り薬治療
塗り薬は蕁麻疹が出た時のかゆみを和らげるもので、飲み薬を補う形使用します。飲み薬を飲んでいても痒い時に必要に応じてお塗りください。また冷やすことも効果的です。
原因のわからない多くの特発性慢性蕁麻疹は治るまでに平均1~3年位、長い場合は5年以上のこともあり、ご不安になることもあるかと存じますが、治癒する日が来るまで根気よく治療を続けましょう。