院長の部屋 81号 青春18きっぷの旅
暑かった猛暑の夏も過ぎ行き、秋の訪れを感じるようになってまいりました。皆さんはどんな夏を過ごされましたか。そして皆さんにとって素敵な夏の思い出はできましたか。さて今回は私の夏の思い出の1ページ、「青春18きっぷの旅」を紹介します。
皆さんは「青春18きっぷ」をご存じでしょうか。11,500円で5日間、JR鉄道全線で乗り放題の切符です。1枚で同時に2人、3人で供用して使ってもよし、特急や新幹線などは特急券を購入しても乗車できない、使用期間限定など様々の条件はついていますが、これ1枚あれば自由気ままにJR全線の普通電車の旅を1日2,300円で楽しめるというお得な切符です。
遡ること約30年前、高校を卒業した春休みに「青春18きっぷ」を使って東北地方へ一人旅に出かけたことがあります。当時は6日分で10,000円だったと記憶しています。東北地方への旅から30年、私にとって2回目の「青春18きっぷ」の旅は深夜発、車中1泊の1日の旅。電車好きの相棒と2人で豊橋0時18分発の「ムーンライト ながら」に乗って、「青春18きっぷ」を最大限に利用しました。「ムーンライト ながら」は大垣発東京行きの臨時夜行快速列車で夏休みなど特別の期間のみに設定されます。丁度、豊橋を深夜0時過ぎに停車するので、23時過ぎの普通列車で豊橋まで行って「ムーンライト ながら」が到着するのを待ちます。「ムーンライト ながら」は指定券が必要で早目に予約しないと指定券が取れないこともあるようです。とにもかくにも「ムーンライト ながら」に乗り込み東京を目指します。かつて特急電車で使用されていた車両を使っているのでリクライニングできる座席でしたが、なかなか寝付けなくて早朝5時過ぎに東京に着くまでどれくらい睡眠がとれたことでしょうか。
今回の旅は千葉県の房総半島を一周して、その後、銚子という町を6.4キロと短い区間を走る銚子電鉄に乗って帰ってくるコースを設定しました。東京駅に着くや、房総半島の東京湾側から回る内房線(うちぼうせん)の始発列車に乗るため右往左往しながら目指すホームへ走ります。予定していた内房線始発列車に乗車すると、初めの1時間くらいは東京、千葉と都会の風景の中を行くのですが、あっという間に房総半島ののんびりした田舎の景色の中へ。井上陽水の「少年時代」という歌の中にでてきそうな風景、そして夏という季節。「夏が過ぎ 風あざみ ~ 青空に残された 私の心は夏模様」 田んぼや山の緑と海の青、のんびりとした田舎に点在する家。地元の愛知県にもこんな風景はありそうなんだけど、初めて踏み入れる土地、そして列車から見る旅先での風景は何故か懐かしい思いが込み上げてきます。
安房鴨川で外房線(そとぼうせん)に乗り換え、その後、大網、成東で乗り継ぎして目的地の銚子駅にたどり着いたのが午後1時でした。存亡の危機を乗り越えてきた銚子電鉄6.4キロを往復乗車し、犬吠駅(いぬぼうえき)で銚子電鉄の名物「ぬれせん」(せんべい)をお土産に買って復路につきます。銚子から東京へ向かう路線沿いもしばらく千葉県ののんびりとした風景が続き、次第に都心らしきビル群が近づいてきました。品川に夕方の5時頃到着。こうしてひと夏の思い出を胸に、蒲郡へと戻ってきました。
最近は自動車を使っての旅が多かったのですが、久しぶりに列車の旅をしました。ぽっかりと心の中に残る夏の日の一日。こんなほっこりした思い出の積み重ねが人生を味わい深くしてくれるのでしょうか。夏の日常診療の喧騒の中に、こんな一日があるから明日も元気に頑張れるような気がしています。
皆さんは心に残る夏の思い出、沢山できましたか?