院長の部屋 45号 1/4の奇跡
梅雨に入り、ジメジメとした季節になってきました。九州南部では大雨の日が続き、私がかつて4年間住んでいた鹿児島では連日の雨で、土砂崩れがあちらこちらで起きているとのことでとても心配です。
一方、三河地方は例年並の初夏を迎えていますが、今年もこの時期に流行する「毛虫皮膚炎」が例年のごとく発症し、ここ最近は毎日のように「毛虫皮膚炎」の患者さんが受診されます。そして、水虫、とびひ、虫刺されなどの患者さんも日に日に増えて、診療を通して「夏がやって来たなー」と皮膚科医ながらの季節感を今年も感じています。
8月が過ぎるまで、皮膚科の繁忙期が続きます。皆様には長時間お待たせすることもあるかと思いますが、暑さが過ぎるまではどうぞご容赦のほどよろしくお願いいたします。なお、平日の午前中が比較的待ち時間が少なく、土曜日は非常に混雑いたしますのでどうぞお知りおき下さい。
さて、先ごろ「愛知県病院薬剤師会東三河支部」の講演会に講師としてお招きを受け、病院薬剤師の方々100余名にお集まりいただき、「開業皮膚科医の四季 病院薬剤師の皆様にコッソリ伝えたい私のコツ」という演題で1時間少々の講演をしてきました。一般の方向けの講演は時々お受けしてきたのですが、開業してからは医療関係者向けに講演する機会がなかったので、少々戸惑いましたが、現在自分の行っている診療そのままの姿を病院薬剤師の方々に伝えるよい機会だったかなーと思っています。講演が終わった今、ホッとしております。
話変わって先日、「1/4の奇跡 強者を救う弱者の話」という本を読みました。遺伝の法則により、同じ父と母から4人子供が生まれると確率的に1人は弱い子、父母が同じ劣性遺伝子をもっていると1/4の確率で遺伝病(障害)をもって生まれてくることを、山元加津子さんという養護学校教諭と子供達にまつわる感動の実話を中心にして書かれたものです。この中から少しご紹介します。
遺伝子の多様性」こそが、人間の優秀さを、そしてあなたの優秀さを生む源泉になっているのです。けれども、私たちは、遺伝子プールの中から、どの遺伝子を受け取るかということを、自分で選ぶことはできません。そして、必ず誰かが病気の遺伝子を持って生まれてこなければならない。突然変異を起こして多様化していくことが、この地球に適応していくこと。多様化するときには、ある一定の頻度で、重度の病気や障害を持つ子どもを生み出してしまうものです。
個人にとって「悪い遺伝子」というのはあるかもしれませんが、社会にとっての「悪い遺伝子」というのはありません。あってはならないと思います。もし、「病因遺伝子=悪い遺伝子」という考え方があるとすれば、それは、そのような考えを生み出す社会が悪いのです。あなたに与えられたかもしれない病気の遺伝子を、たまたま受け取って生まれてきた人がいる。その人に、できるだけ快適な生涯を送れるように配慮し、尽くすことは、健康に生まれたものの当然のつとめだと思います。(以上 1/4の奇跡 より抜粋)
生まれながらにして遺伝病や障害をもって出生した人たちがいるからこそ、健康な自分がいる。同じ親から生まれた兄弟でも、出来のよい子・悪い子、健康な子・病弱な子・障害をもって生まれた子、様々ですが、出来の悪い子、病弱な子、障害をもって生まれた子がいるからこそ、健康で優秀な自分がいることに感謝し、その分を弱者に様々な形でお返しすることのできる人間でありたいし、社会になってほしいと願っています。
平成22年6月27日 院長