院長の部屋 44号 師来る(しきたる)
今年も夏の皮膚病が徐々に増えはじめてきました。皮膚科医にとってはこれから9月に入って秋風が吹く頃までは水虫、トビヒ、虫刺され、アセモ、日光皮膚炎など夏に生じる多くの皮膚病患者さんで忙しい季節となります。
患者さんにとりましても待ち時間が長くなる季節ですので、大変申し訳なく思いますが、なにとぞご容赦のほどよろしくお願いいたします。
予約制について以前に何度も検討いたしましたが、他院の状況をお聞きすると皮膚科の特殊性から予約制導入した場合でも20~30分の待ち時間が生ずることはしばしばだそうで、予約なしで1時間待つより、予約して30分待たされる方のほうがイライラ度が高いというデータや、予約制にした場合、予約なしの患者さんの待ち時間が非常に長くなってしまうという状況などを考え、今後も予約制は当面見合わせることといたしますので、どうぞご理解いただきますようよろしくお願いいたします。
さて先月、私の皮膚科学の師匠 神崎保先生にはるばる鹿児島から蒲郡へおいでいただきました。鹿児島大学名誉教授の神崎先生には蒲郡市医師会学術懇談会という講演会の講師としておいでいただき、皮膚科医以外の内科や小児科などの開業医の先生向けの皮膚疾患のお話をしていただきました。
神崎先生はかつて名古屋市立大学医学部皮膚科助教授として名古屋にいらっしゃられました。私が初めて神崎先生にお会いしたのは医学部5年生の時でその後、私が皮膚科医になって3年目に鹿児島大学教授としてご栄転されました。
引き続き、神崎先生のもとで勉強したくて私は平成6年名古屋をでて鹿児島へ向かいました。29歳の冬のことです。このことが私の仕事人生にとって最も大きな転機だったと思います。
鹿児島大学と奄美大島にある県立大島病院での約6年は私とっての遅い青春時代のようでした。体力も精神力もあったこの時期はとにかく精一杯前向きに歩んでいた頃でした。神崎先生には仕事面ではとても厳しく、プライベートでは本当に親身なって優しく接していただいて、私にとって師匠であり、鹿児島でのオヤジのような存在でした。
そんなお世話になった師匠をお呼びする機会を今回持つことができてとてもうれしく思いました。神崎先生もかつて名古屋においでのころ蒲郡市民病院へしばしば診察にこられていたので、16年ぶりに蒲郡に来られるのを懐かしさとともに、とても楽しんでゆかれたようで弟子として本当にうれしかったです。
話かわって日本人の医療の満足度15%という国際比較の結果について。今回発表されたのは世界22カ国の比較で、日本は最低レベルでした。
この結果は医療を提供する我々としては真摯に受け止めるべき結果ではあるものの、日本国民の皆さんが外国の医療事情をあまりに知らなさすぎることと、マスコミがあまりに偏った情報ばかり伝えていることに私としても、少々物申したくなる結果でした。
自己破産原因の理由第一位が医療費であるアメリカの満足度が51%、緊急性のない手術は半年以上順番待ちのイギリスで55%の満足度。稼いだお金の大半を消費税や所得税として税金で収めるスウェーデンで75%。
日本の医療が様々な問題を抱えているのはわかっていても、外国の実情を知っていれば日本の医療って外国に比べてかなり安価でかつレベルが高くてすばらしいはずなのですけどね・・・。
医療を提供する側と受ける側のコミュニケーションの問題や、国民の皆さんが医療に過剰な期待をしていることがキーになっていると思いますが、ちょっと悲しい結果でした。
平成22年5月24日 院 長