院長の部屋 35号 雨降る夏2009
雨の多い夏となっています。水害に遭われた地域の方々には心よりお見舞い申し上げます。また日照不足で様々な作物にも影響がでてゆきそうですし、かき入れ時の観光地、特にお隣のラグーナ蒲郡もこんなに雨が続くと経営大丈夫?と人ごとならが心配してしまいます。早く夏らしい夏がやってくることを願っています。
さて少し前、越中五箇山の合掌作りの民宿に泊まってきました。ここ数年のマイブーム、日本の伝統に触れる旅の一つとして、世界遺産となった白川郷・五箇山の合掌作り集落を訪れる旅です。数年前に白川郷の合掌作りの民宿に泊まり、とても良い経験だったので再訪を予定したのですが、折角なので今度は五箇山に宿をとることにしました。
いつも旅をして感じることは、泊まる宿でその旅の印象がかなり変わってくることです。快適に過ごすことを目的としたシティホテルや高級な食事を供したり、すばらしい露天風呂のある旅館は別として、心に残る宿にはやはり人のぬくもりを感じます。今回泊まった民宿「YK」にもそんな「人のぬくもり」を感じて帰ってきました。
約140年前に建てられたこの合掌作りの民家は昭和42年から民宿「YK」を創業されました。現在、ご主人と奥さんの二人で民宿をきりもりされています。ご主人は52歳まで東京と富山でカメラマンとして活躍され、15年前に実家であるこの家に戻られたとのこと。その宿には夕食の1時間前につき、まずは囲炉裏端にて抹茶で一服させていただきました。そしてヒノキの桶風呂で汗を流し、お楽しみの夕食です。名古屋の壮年夫婦と東京の若いカップルの二組と私のグループ合わせて三組が囲炉裏を囲んで一緒に食事をしました。
食事が少しすすむとご主人がいらっしゃって五箇山のお話をしてくれ、またこちらからの問いかけに丁寧に答えていただきました。最近、見ず知らずの人と食事を共にして語らうという機会が少なくなったので、このような機会はとても貴重なものでした。
食事には鯉のあらい、岩魚の塩焼き、山菜の煮〆、酢の物、茶碗蒸し、山菜の天ぷら、五箇山豆腐やっこなど、食べきれないほどの山と川の幸が並びました。そしてご主人の作られたお米のおいしかったこと。これぞ本来の「日本の食の形」。健康へ第一歩となるまさに健康食。こんな食事を幼い頃から中心にとればメタボリック症候群やアレルギー疾患も減るんだろうなーと、かみしめながら完食。そして何といっても「岩魚の骨酒」のおいしかったこと。骨酒は前回、白川郷で初めていただいてからその味が忘れられず、今回も前もって予約しておいたほどです。というのも「岩魚の骨酒」は通常前日までに予約しておかないと準備の関係で飲めないのです。
食後、夜の集落を散歩した後で、このまま寝るのは名残惜しかったので囲炉裏端でたたずんでいるとご主人が焼酎を持ってこられ、「少しやりますか」と囲炉裏に吊った釜からお湯を汲んで焼酎のお湯割りを振舞ってくれました。そして焼酎をいただきながら、ご主人からいろいろなお話を聞く機会を得ました。五箇山を守り続けてゆくこと、外国の世界遺産を訪れた時のこと、カメラマンとしての過去と現在、国際化には祖国の文化や伝統を知ることが大切だということ、この宿を訪れた多くのVIPのことなど話は尽きず、囲炉裏端で二人、23時過ぎまで語り合い、思い出深き時を過ごすことができました。
こんな「人のぬくもり」を感じる宿で自然食をいただき、日本の原風景を肌で感じ、心の栄養をたっぷりいただいて帰路につきました。
今回の旅は「雨降る夏 2009」の思い出の1ページとして、私の心の片隅に永遠にきざまれることでしょう。
平成21年8月3日 院 長