院長の部屋 19号 健康問答
2月に入って寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。今年の冬にはいって感じているのは、「しもやけ」と湯たんぽによる「低温熱傷」の患者さんが例年と比較してかなり多いことです。どちらも寒さと関連する傷病なので春になればすっかり影をひそめることでしょうが、日常診療の中でも季節を感じています。
さて今回の題目の「健康問答」ですが、読まれた方もいらっしゃると思いますが、 作家の五木寛之さんとホリスティック医学(全人的医学)の旗手である帯津良一先生 との対談集の題です。このお二人が様々な健康に関するテーマについて語り、最後に 帯津先生が自分なりの回答をだされています。私ごとになりますが、18年前に医師になって西洋医学中心の医学と医療の中で患者さんと対峙して参りましたが、まもな く西洋医学のみでは治しきれない病気が沢山あることの現実にぶつかりました。生活習慣や食生活すべてを包括的に改善しないと治らない病気がなんと多いことか。患者さんの病気(検査データや表面的は症状)のみを診るのではなく、患者さんを丸ごと 「人」として診る、その重要性を医師としてかけ出しの頃からすぐに痛感したのです。その全人的医学=ホリスティック医学(身体、心、命が一体となった人間まるごと、そっくりそのままとらえる医学)を25年前から国内において積極的に求めてこられた帯津良一先生の回答、「西洋医学も尊重するが、東洋医学も決しておろそかにしない、理論も馬鹿にせず、経験からくる直感も大事にする」そんな自然体の姿勢に強い共感を覚えつつ、この対談集をなるほどと相槌うちながら読みました。その中から少しだけQ&Aとして簡単に抜粋したものをご紹介します。
Q1:牛乳を飲むのはいいことか、悪いことか。
A:牛乳は無理して飲まなくてもいい。好きな人は適量飲んでいても問題はない。
Q2:肉は本当に体に悪いか。
A:肉はやたらと食べるのではなく、ときどき、満を持して、ときめいて食べよう。
Q3:健康のため1日30品目食べなければいけないのか。
A:1日30品目食べなければいけないという、栄養学的な根拠はあいまい。こだわる 必要はない。
Q4:朝食ぬきの生活は、本当に体に悪いか。
A:空腹を感じていたら、朝食をとるべきだろう。無理して食べることも、無理して飢餓状態をつくることもない。
Q5:アルカリイオン水は本当にからだによいか。
A:アルカリイオン水の効き目は軽々しく断定できない。水は大事だけれども、水だけで病気が治るわけではないから、あまり神経質にならないほうが良い。
Q6:抗菌・防菌対策は、本当に病気を予防できるか。
A:うがい、手洗いを忘れても問題ない。やたらに抗菌、防菌という考え方のほうがお かしい。
Q7:メタボリック症候群は、本当に危険か。
A:メタボリック症候群の基準値には、ほとんど注意をはらう必要はない。メタボリック症候群なんて、おせっかいが過ぎるのではないか。
Q8:ガンの早期発見は幸運か。
A:ガンの早期発見が幸運とは、一概にいえない。
Q9:笑いは本当に元気の源か。
A:無理に笑う必要もない。辛くなったら、だれはばかることなく、泣いたり、長い嘆息をつきながら生きてゆくのがよい。ただあるがままに。
Q10:玄米食は究極の健康食か。
A:玄米菜食は一つの思想である。その思想に共鳴し、おいしく食べられる人がつづければいい。そして飽きたら、時々休む。
Q11:長生きは本当に幸せか。
A:長寿だからといって、決して幸せじゃない。あるがままに生きて、死んでゆくのが理想である。
健康オタクの方、続きは「健康問答」(平凡社 1470円)、「健康問答(2)」(平凡社 1470円)をどうぞ。
平成20年2月7日 院 長