院長の部屋
COLUMN

院長の部屋 109号 奄美大島で過ごした2年間 Vol.4

今から約20年前、鹿児島県立大島病院に勤務していた2年間を振り返る「奄美大島で過ごした2年間」の最終回は離任する少し前に「奄美野鳥の会」主催の「オオトラツグミ生息調査隊」への参加、奄美の画家 岬眞晃さんとの出会いから現在までの繋がり、そして奄美大島を離任するお別れの「お見送り」の儀式について振り返ろうと思います。

オオトラツグミの生息数調査隊にボランティア参加

あと少しで2年にわたる赴任期間が終わろうとする頃、「奄美野鳥の会」が主催する野鳥オオトラツグミの生息数調査隊にボランティア参加しました。オオトラツグミは奄美大島の常緑照葉樹天然林のみに留鳥として生息する国指定天然記念物であり、また国内希少野生動植物種に指定されている野鳥です。オオトラツグミは繁殖期の前半(2月~4月初旬)になると「キョロン、ツリリ~」と夜明け前の30分程の暗い間に一斉にさえずります。「奄美野鳥の会」では、その習性を利用して夜明け前に繁殖期の森へ入って調査をすることで個体数や分布域を調査する活動を継続してきました。

多くのボランティア参加者は二人一組となって各々決められたポイントからポイントまで歩き、どの方向から何時何分にさえずりが聞こえてきたかを地図上にプロットして、各チームから提出されたデータを基に、どの付近にオオトラツグミが生息しているか推定するのです。相棒と二人一組で夜明け前の奄美の暗い森の山道を、オオトラツグミのさえずりに集中して聞き耳立てて歩いたあの時間は、たぶん後にも先にも経験することのないであろう、貴重な思い出になりました。

奄美の画家 岬眞晃さんとの出会い

ある時、街中で奄美の画家 岬眞晃(みさき しんこう)さんの個展が行われており、ふらっと会場に入ってみました。奄美大島の海と空、アダンの木、奄美の森や渓流などの水彩画や油絵が所狭しと展示されていました。

その中で私の目をくぎ付けしたのが一本の大木とその横に沿うヒカゲヘゴ、そして木々の間から差し込む光に輝く森を支える植物たちが描かれた30号サイズ(73x90センチ)の水彩画でした。「一目ぼれ」してしまいました。題名は「奄美12か月 皐月」という、徳之島伊仙町のウラジロガシの森が描かれたものでした。

「奄美12か月シリーズ」は一月睦月から十二月師走まで12作品で構成されるシリーズで、「皐月」はその中の5番目、五月の風景を描いた作品です。私の誕生日が5月であること、翌年5月に開業を予定していたことなど、運命の出会いだったような気がします。値段は決して安いものではありませんでしたが、妻と十分に相談した上、奄美大島で暮らした2年間の最後の思い出として「奄美12か月 皐月」を購入することにしたのです。これが岬さんと私の出会いです。

岬眞晃さんは名瀬でタンギー工房というアトリエを主宰されています。作品の多くは奄美の自然を題材にされています。奄美大島在住時、しばしばドライブしては島のあちらこちらを巡っていたので、岬さんの描かれた絵は自分にとって懐かしい風景ばかりです。そのような理由と、現在私が開業しているクリニックが海の見える場所にあり、海をイメージした内装や装飾品を多く取り入れているという理由などから私は岬さんの大ファンとなり、これまでに多くの絵画を譲っていただいてきました。

開業して18年半の間、折に触れ数点ずつ作品をお譲りいただき、現在30作品を超す絵画を収蔵するに至り、数か月毎に作品を入れ替えて院内に飾っています。マングローブ、ガジュマル、アダンといった南国の植物、そして奄美大島の海と空の風景画に患者さんのみならず私自身も日々癒されつつ診療しています。

そのようなご縁をいただいた岬画伯に当院が開院15周年記念冊子を作製した際に次のような祝辞をいただきました。

開院15周年記念誌に寄せて 岬 眞晃 (画家 奄美大島在住)

1972年秋の事でした。上野公園の国立西洋美術館で、ふと目にした油彩画に衝撃を受け、はやる心を抑え帰路の画材店で絵具一式を購入、独学での絵描き人生が始まりました。16年前に奄美で開催された個展会場で大竹先生との出会いを得、院内に作品を飾らせて頂き光栄な事と感謝しているところです。

小集落が海岸沿いに点在する奄美では、夕暮れ時になると村人が申し合わせたように浜へと向かいます。『日没の浜辺には生き物を元気づける微細な「気」(エネルギー)が波と共に打ち寄せてくる』という話を島の古老から聞きました。可視光の元、目には映らない風や波の音色、心安らぐ微弱な波動(エネルギー)を、色彩を通して表現すべく模索しています。

癒しの地;奄美の活力(エネルギー)が大竹先生(海岸通り皮ふ科)の理念と共に共鳴し、多くの幸せと笑顔溢れる医院として、益々ご発展していく事をお祈り申し上げます。

岬さんとのご縁、これからも大切にさせていただけたらと思っています。

離任はフェリーで ~ お見送りの儀式

奄美大島と本土は飛行機で移動することがほとんでしたが、医師は離任する際は自家用車と共に島を離れることもあってフェリーに乗って離任することが多かったようです。そしてフェリーで離任する際は親しかった医師や看護師、薬剤師がフェリー埠頭に駆けつけ、船が離岸するまで紙テープを手にしてお見送りをする風習が続いていました。

夜10時から12時くらいの夜遅くにフェリーは名瀬新港を出発するのですが、それにもかかわらず多くの関係者がお見送りに集まります。仲間が大島から鹿児島へ帰任する際、私も何度もお見送りに行ったものです。そして私が大島を離れる時も深夜にもかかわらず多くの仲間が我が家族を見送ってくれました。一生に一度の名瀬新港フェリー埠頭での素敵なお別れ。こうして2年にわたる奄美大島への赴任生活に幕が閉じました。

私にとって奄美での2年間とは

鹿児島県立大島病院勤務、そして奄美大島で暮らした2年間を様々の角度から回想してきました。医師としての仕事は精一杯努めてきたつもりです。そしてプライベートも精一杯楽しんできたと思います。奄美大島での2年間は私の心の中で今でもキラキラと輝き続けています。人と人との繋がりを肌で感じる毎日でした。離島診療を経験してきたことは長い医師人生の中で、ホッコリとした暖かな思い出として今も心の片隅に残っています。

Vol.5に続く。

令和元年10月15日 院長

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